真実ってさ
ちょっと残酷だな
嘘ってさ
ちょっと苦しいな
それでもさ
真実とか嘘とか 理由があると思うんだ
少し遠くても、ずっと傍に。
□□□君が歌う鎮魂歌□□□
「状況は悪い一方か・・・」
廊下を走りながら一人ごちる。
敵の鮮やかな奇襲は、見事にタルタロスの兵士達を混乱させていた。
は、向かってくる敵を斬り捨てながら機関室へ向かう。
(たぶん、狙いは導師・・・)
(ジェイドがいるから大丈夫だ・・・・きっと。)
がいるのは、丁度導師イオンがいる船室とは程遠い場所。
しかも向かう先は機関室なのでジェイドと会うことはない。
(操縦士がやられて船が動かなくなったら・・・)
少し、怖い。
船が沈むとか、動かなくなるとか、陸の上だから溺れることはないけど。
それでもやっぱり恐怖は拭えない。
(それにしても・・・)
また一匹、ライガを真っ二つに切り裂く
(そのまま機関室に出ればよかったな・・・)
♪
遡ること10分前。
は例の白い部屋で結界を張り続けていた。
「っ・・・・」
天才・・・とはいえ、それは武術の方をいったまでで、実際は譜術の方はジェイドに習ったくらいだ。
「そろそろ・・・キツイな」
このままでは扉が破られるのも時間の問題だ。
敵が来る前に脱出しなければ・・・と部屋を見回す。
自分が居心地のいいように作られた部屋なので、普通の好待遇の者の部屋と比べると少しだけ狭い。
正方形の部屋に、被さらないように正方形のふわっとしたカーペットが敷かれていて、
真ん中にはクッションが置かれている。
入るときの部屋の扉は、白が基調になっていて「純潔」というイメージを抱かせるのだが
・・・この部屋は一言で表すと「子供部屋」だ。
小さい子供が遊ぶときのように靴を脱いでカーペットへ上がる。
壁は白。天井も白。カーペットの間から少しだけ覗く床も白。
カーペットは空を思わせるような蒼で、クッションは白・水色、黄色とバラバラ。
その日の気分によってクッションの色を選ぶのだから当たり前といわれれば当たり前なのだが。
壁には本棚や机など余計な物は一切置かれておらず、「ただ座っているだけ」という部屋。
そんな部屋の真ん中に立って、くるりと視線を壁へ向けた。
(ヘンなところに出て、敵に入ってこられたら困る・・・)
心の拠所を土足で踏み荒らされたりなんてことされたらたまらない。
それだけは絶対に避けなければならないのだ。なんとしても。
「しかたない・・・」
扉の前に居る不届き者を蹴散らして、導師の護衛を探しに行けばいいんだ。
その時に部屋は封印しておく。これでいいじゃないか。
「閃光・・・はさっき使ったから無理か・・・・」
ならば、と靴を履いて扉の前に立ちながら譜歌を歌う用意をする。
『紅蓮の獅子よ、我が前の敵を蹴散らせ』
『臆すことはない。お前の後ろは時間が止まる』
『前、だけを見よ。また我らが出会う時に時は動き出す』
『―――――――――――――der Hammer des Zorns』
瞬間、は発動と同時に扉を蹴破り紅蓮が瞬く。
「ぐぁ・・・」
「グルルルっ」
「ああああ・・・」
悲鳴さえ上げることもできずに生きたまま燃えていく目の前のモノ。
『―――Burst』
第二声の言葉で背後の扉が凍結する。
時が、凍りつくように。自らの心の扉を閉じきってしまったように。
即興譜歌はマルクト軍属、の持ち技だ。
その名の通り、その場で譜歌を歌って効果を発動させる。
ただの譜歌なら譜術師にも使うことは出来るが、即興となれば話は別だ。
かなりの高等技術になる上、おそらくこのオールドラントで使える者はほぼ居ないだろう。
それに加え、二重効果だ。さっきの譜歌がいい例である。
焔の獅子を出現させた後、「時を止める」と称して扉を氷で破壊する。
炎と氷。正反対の性質をほぼ同時に使っている。(少し時間差はあるが。
一声目で焔を。二声目で氷を。
そのかわりに発動後の反動が大きい上、疲労やリバウンドなども伴うため多用ができないのが難点なのだが。
「はっ・・・・・・げほ」
倒れるな。倒れれば死ぬ。
必死に自分に言い聞かせて剣を構える
「恐怖を捨て、前を見ろ」
僕は大丈夫だから。
「敵に背を向けてはならぬ」
まだ、大丈夫だから
「死は常に、己の傍に付き従う」
「月夜は道が 見えるから」
それでも、少しだけ苦しかった。
>>
(06-09-20)