裏切る者には裁きを






虚言を吐く者には裁きを






滅亡を齎す者には裁きを








それでも





神に人を裁く力は ない









□□□君が歌う鎮魂歌□□□

















国境から徒歩で三日。見えてきたのは永遠に続く緑と青の景色ではない、建物
「お、見えた見えた・・・ったく、やっとかよ」
この三日で何度愚痴を聞いたかわからない。
「イオン様・・・お体の調子は?」
ティアの心配そうな声に、微笑んでみせながらイオンが応える
「大丈夫です。しっかり休んでますから」
そう言う割には顔が少し青白いな、とは思う。
「俺は、師匠みたいに鍛えてねーっての」
またか。というような顔をしたジェイドが、やれやれと首を振った
「ここまで来て、まだ言いますか」
やっぱり厭きれているんだ・・・と、話の輪には入らずに、ジェイドをちらりと目だけで見る
言われる小言に聖獣の、どこかメイドを思わせるような言葉遣い。
いらついたルークが小石を蹴ると、ミュウに当たった
「ミュウに当たることはないでしょう!一番大変なのはミュウなのよ!?文句も言わずに私達の歩くペースに合わせて・・・」
「うっせーな」
舌打ちをひとつして、ルークは前に向き直った。
「いいから早くいこーぜ。師匠が待ってるんだからさ」
最初に足を止めさせたのは誰だったんだか・・・
厭きれたように溜息を吐くジェイド、ルークはそれに気付かないかのように歩を進める

ばさばさばさ、と見覚えのある空を飛ぶ魔物が20体ほど頭上を過ぎ去った
「な、なんだあ!?」
「あれって、根暗ッタのペットだよ!」
根暗ッタ・・・聞いたことない単語だな。とは思いながら、首を傾げるガイの方を見遣った
「もう!」
駆け寄ったアニスがガイをぽかぽかと叩く。
引き攣った顔で動きを止めるガイにはお構いなしに。

(ああ、女性恐怖症か・・・)
と、そこら辺に落ちている小石を見るような目で、ガイから目を逸らす。あの時のことがぽんやりと頭に浮かんだ。








「あ・・・」
こけっ、と不注意のためか、そこら辺にあるようなでこぼこの段差に躓いてしまった。
「うわわわわわわ」
ぺしゃっと、と話していたため すぐ隣を歩いていたガイに尻餅をつかせるような格好で倒れこむ
「、っ・・・申し訳ありません」
「いいいいいいいや・・・別に構わないけど早く退いてくれると有難いんだが・・・!」
顔を引き攣らせて地面に手を付いた格好で、ガイが足の上に広がる銀髪に向かって言った
「ガイー、なぜそんなに焦るのです?男なら嬉しいくらいでしょう―――」
「俺の体質のこと、話しただろ!」
「――――美形の男性に押し倒されるのは。」
「・・・は?」
立ち上がって、ぱんぱんと服に付いた草を払うを凝視する。
は男ですよー?気付かなかったんですかぁ?」
「え、は・・・ぇえ!?」
「・・・手を」
「い、いや・・・」
男だと説明されても尚、理解できない。
思わず差し伸べられた手を断った






昔から間々あることだ。
ある時なんて、男性軍人に「付き合って下さい」と女性用の指輪を渡されたこともある。
またある時なんて貴族の方に「貴女にならさぞかし似合うことでしょう・・・」なんて言葉と一緒にドレスを貰ったこともある。
またある時なんて・・・

もういい、やめよう。考えたって間違えられなくなる方法はないんだ。

「港の方から飛んできたわね・・・行きましょう」
只一人、先程から強張ったままの顔で、ティアが歩き出した。
走り出す一行。はただ、ジェイドの一歩後ろを走る。



先へ走れば走るほど、焼けるような匂いが強くなっていく。
そしてアーチをくぐったその先の光景―――――――――血の海。
地面へと倒れこむ兵士たち。
燃え上がる船。
「アリエッタ・・・!」

今にも泣きだしそうな顔。

なぜそんな顔をするの?



理解できない。


「ジェイド・・・」
状況を理解する能力はほとんどない為か、ジェイドの方を向かずに言う
「アリエッタが襲ったようですね」


「命令して」
が柄に手を掛けて前を向いたまま、唐突に言った
「できません」
その言葉を予想していたようにジェイドもまた、前を向いてアリエッタを睨みつけたまま言う
「命令してよ!」
「ダメです」
「ジェイド!」
「いけません」
無言の圧力と下されぬ命令に、思わず柄を握る手に力が入る
「アリエッタ!誰の許しを得てこんなことをしている!」
「総長・・・ごめんなさい・・・」

アリエッタを諫めるヴァンが視界を遮り、は唇を噛んだ。

「っ・・・」
「我慢なさい。私は命令しません」
悲しそうに俯く。・・・それでもの瞳は安心の色を映していた

「・・・・が、コーラル城へ来い・・・です。来ないと・・・あの人たち・・・・・・殺す・・・です」



叩き付けるような強い風が吹いた。
思わず腕で顔を隠すと、一瞬の後にアリエッタは消え去っていた。





「ジェイド!」
非難するような声で、がジェイドに怒鳴る
「命令とは、従わない者に対して使うものです。・・・それとも、何です?空中に居る相手に詠唱を気取られずに攻撃できるとでも?」
「それは・・・」
思わず言葉を詰まらせる少年に、追いかけるようにして事実を述べる
「無理でしょう」
「・・・・ごめんなさい」
「わかればいいんです。勘違いしてはいけませんよ」
言い切って、背を向けるジェイドに向かってもう一度

「・・・ごめんなさい」

謝るだけではない。



































ルーク。僕は間違ってないよ






邪魔するものすべてを 斬り捨てる。





ルークの目の前に立ち塞がるものすべてを 壊してみせる





絶対に許さない。ルークの幸せを壊すものなんて





迎えに行くよ  待っててね  助けに行くから





たとえどれほどの命を奪ったとしても





たとえどれほどの困難が待ち構えていたとしても





たとえ最後に待つ者が  僕の大切な人でも







間違って、ないよね?

























「ヴァン謡将、他に船は?」
「……すまん、全滅のようだ」

追いついて事態を見ていたガイが、ヴァンへ声を掛ける。
ヴァンは手にした剣を鞘に収めながらガイの方へ振り返り、首を振った。

「応急措置でなんとかなる船は一隻だけあるが、それも機関部の修理には専門家が必要だ。
だが、連れ去られた整備士以外となると――訓練船が戻るのを待つしかない」



「―――――――――――生きてる」

ヴァンとガイの会話には興味がないのか、足元に倒れている兵士を見つめながら、がぽつりと呟く
でもそれは、ルーク以外の誰にも聞こえなかった。ただ皆が死んだ人間へ鎮魂の祈りを捧げていた


祈りを捧げる事に意味はあるのだろうか

自分の欲求を満たすための行為じゃないの

死んだ人のため、とか言って


本当は 自分が善行をしていると 表したいだけ


「ジェイド・・・?」
「ようするにアリエッタとそして…アッシュはルークとイオン様に用がある、ということですよ」
鼓動の消えた兵士を見下ろすの肩に手を置いて、眼鏡を押し上げた
「駄目だ、訓練船の帰港を待ちなさい。」

は何かを思うようにルークを見つめる。

「……アリエッタは私が処理する」
「ですが、ヴァン。それではアリエッタの要求を無視することになります。整備士の命が――」

イオンは足を踏み出して、そう言うがヴァンはイオンを振り返り、言った。

「導師。いまは戦争を回避するほうが重要なのではありませんか?あなたはそのためにこのような場所にまで来られたのでしょう?」

「・・・・・・・」
イオンがその言葉に黙り、俯く。

たくさんの犠牲より、たった一人の犠牲の方が少なくて済むのに。なんで助けようとするの?
疑問に思ったことを、ジェイドに目で訴える。
「         」
声を発さずにジェイドが言った


い つ か わ か る と き が き ま す


それはいつ? わかるときは来るの?




ジェイドの苦しげな表情とに放った言葉に、それ以上言葉を続けられなかった











貴方が居れば 他に何も要らない







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(07-02-09)